06 Aug 琉球新報 落ち穂「Art Initiative Okinawa」
今年3月にArt Initiative Okinawa(AIO)を立ち上げた。個人事業とは別にグループの活動として、将来的にアートセンター設立を目指している。その背景に、旧前島アートセンター(MAC)の理事、国吉宏昭さんとの出会いがある。彼は沖縄のアートシーンを支え、様々な機会を作った影の立役者だ。出会った頃の国吉さんは、どの展覧会にも必ずいて、一体何者だろうというのが私の印象だった。そのうち私の発言に「内間さん、あんた面白いね〜。今度お茶でも飲みながらゆっくり話そう」と言うのだが、次回会って挨拶をするとすっかり忘れられていた。そんなやり取りを何年も繰り返していたが、アーティスト津波博美さんの紹介で親しくなった。
当時、英国と沖縄を行き来し、国吉さんと親交のあった博美さんから「国吉さんは車が無いから、展覧会に行く時は連れていってあげて」と頼まれたからだ。彼の興味は美術以外にも舞台、音楽、映画と幅広く、そこが私と一致して、あちこち一緒に観に行ってお互いの感想を語り合った。彼の視点は鋭く、意見交換をすることで鑑賞の楽しさは2倍に広がった。
私が帰国した年にMACは解散したので、その実態をよく知らない。ただMAC主催による国際交流展「ワナキオ」の参加者から話しを聞き、事務局を担っていた関係者らの現在の活動から、人材育成や世代を超えた交流に大きく役立っていたと思う。国吉さんが亡くなり1年が過ぎたが、彼の後ろ姿を振り返り、アーティストと社会を繋げる役割とアートセンターの必要性を感じ、有志で活動している。
国吉さんのエピソードに、MACのあったビルの所有者に場所を使わせてもらう交渉をしたり、自身がギャラリーを経営していた際に画家の真喜志勉さんや金城明一さんらの展示を行なっている。アーティストらに興味を持ち、助言し、自ら企画し、人を紹介するなど、彼にお世話になった人は多い。生前、死んでも化けて出てくると言っていた彼が、大声で「ぶっ飛んでるね〜」と楽しめる企画を考えている。
内間 直子(アーツマネージャー)
2020年8月6日 琉球新報 文化面連載「落ち穂」より転載