27 Nov 琉球新報 落ち穂「Soundscape Okinawa」
私が事務局長を務めるAIO(アートイニシアチブオキナワ)主催で、12月5、6日に南城市糸数城跡で野外音楽イベント「サウンドスケープ沖縄〜耳を澄まし、自然に溶け込む」の開催を予定している。ドイツ出身でAIO代表のスプリー・ティトゥス以外の出演者を含むほとんどのメンバーが、このイベントのために初めて糸数城跡を訪れ、手つかずの自然と壮大なスケールに圧倒されている。
沖縄は独特の自然環境に恵まれ、城(グスク)という先人たちが生み出した造形物が、自然の中に溶け込む姿を見ることができる。琉球石灰岩を積み上げた城壁や天に向かって美しくそびえ立つアザナの景観が特徴的な糸数城跡は、本島南部に位置する最大級の城(グスク)だが、その存在は意外と知られておらず、手付かずの自然と城壁の織りなす雄大な景色を堪能することができる。
その糸数城跡を舞台に、アーティストがその場所に特化した音を創り出すサウンドスケープ沖縄では、自然と城(グスク)の石垣によって作られた風景を楽しみつつ、観客が自由に城内を動き周り、エリアからエリアへ移動することによって、耳を澄まし、それぞれの聴こえる音を構築したり、再編成することができる音の野外美術館である。
参加者が、場所と音の持つ特性をそれぞれの視点で捉え、コロナ禍で閉じ込められた感覚を解放し、悠久の沖縄時間(ウチナータイム)を感じて欲しい。
また、地域のフィールドワークとして、南城市玉城糸数区の協力を得て、拝所巡りや歴史についても学ばせてもらった。糸数区では地域の行事として旗頭や獅子舞などが盛んなようである。沖縄に住んでいてもまだまだ知らないこと、初めて訪れる場所がたくさんある。
この機会に地元を再発見するピクニック気分で、沖縄の歴史や風景を感じて、観光や開発という名の下に、整備が進んで破壊されていく沖縄の現状を考える時間にもなればと思う。真の豊かさや後世に残したいものとは何か、訪れる人たちが改めて考えるきっかけになることを願う。
イベントの詳細は、www.soundscape.okinawaをご覧下さい。
内間 直子(アーツマネージャー)
2020年11月27日 琉球新報 文化面連載「落ち穂」より転載